相続のご相談について具体的な対策
=相談内容=
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主人が平成27年4月に亡くなり相続人は、私と娘の2人だけです。
遺産は合計6億円です。
内訳
現預金 1億円
上場株式 2億円
不動産 3億円
2次相続も含めて対策を教えて下さい。
(守秘義務がありますので金額は変更しています。)
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納税資金については、現預金と上場株式だけで3億円あるため問題ありませんでした。
遺産分割についても親子関係が良好なため問題ありませんでした。
残る問題が節税となります。
今回の状況ですと3種類の対策が考えられます。
◯遺産分割方法
◯養子縁組
◯生前贈与
まずは『遺産分割方法』について
6億円を奥様と長女で分割するパターンを3つ想定してみます。
a 奥様 3億円 長女 3億円
b 奥様 2億円 長女 4億円
c 奥様 1億円 長女 5億円
それぞれの相続税を計算すると
a 奥様 0円 長女 9,800万円
b 奥様 0円 長女 1億3,400万円
c 奥様 0円 長女 1億6,400万円
配偶者の税額軽減という特例を最大限使える「a」の奥様3億円、長女3億円を取得する分割方法が最も有利になります。
ただ奥様が亡くなった場合の2次相続まで含めるとどなるでしょうか?
奥様が1次相続で取得した財産がそのまま残っており、2次相続で長女が全て相続している場合の相続税は
a 長女3億円 相続税 9100万円
b 長女2億円 相続税 4800万円
c 長女1億円 相続税 1200万円
1次相続と2次相続を合計すると
a 1億8,900万円
b 1億8,200万円
c 1億7,600万円
1次相続で最も有利だった「a」よりも「c」は1300万円納税額が少なくなります。
つまり「c」の奥様が1億円、長女が5億円を相続する分割が最も有利となります。
分割するときは、2次相続まで含めた税額で考える事も重要ですね。
次は『養子縁組』です。
長女の夫や子供を奥様の養子にします。手続きは、市区町村に『養子縁組届 』を提出するだけです。
養子になると、養親の扶養義務と相続権が養子に発生します。そのため2次相続では相続人が1人(長女のみ)→2人(長女+養子)に増えます。
2次相続の相続人が2人の場合の相続税額は
a 財産 3億円 相続税 6,920万円
b 2億円 3,340万円
c 1億円 770万円
となり相続人が長女1人しかいないときよりも
a △2,180万円
b △1,460万円
c △ 430万円
相続税が少なくなります。
2次相続では配偶者の税額軽減が使えないことと、相続人の数が1次相続よりも1人少なくなるため、税額負担が重くなりがちです。
そのため養子縁組を検討する価値はあるかと思います。
ちなみに1次相続でも養子縁組により相続人を1人増やした場合も2,160万円税額が少なくなります。
最後は『生前贈与』です。
2次相続の財産が3億円あったとすると、相続税の税率は約30%です。
一方、奥様から長女へ財産を600万円贈与した場合の贈与税の税率は約12%です。(平成27年以降の改正税率適用)
同じ600万円でも相続でもらうと180万円の相続税が必要です。
税金を支払って手元に残る金額は420万円となります。
一方、贈与でもらうと72万円の贈与税の負担で済みます。
税金を支払って手元に残る金額は528万円です。
つまり財産を相続で受け取るよりも生前に贈与で受け取った方が手元に残る金額は108万円多くなります。
また相続人の長女よりも相続財産をもらう予定のない長女の子供、つまり孫に贈与することも有効です。
生前贈与というと110万円の贈与税が課税されない範囲内が一般的かと思いますが、相続税率が高い方は贈与税を支払ってでも生前に財産を移していく事も検討されてはいかがでしょうか。
記 H27.5.7
・2015年7月7日 配信
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