役員退職給与の損金算入時期
役員退職給与の損金算入時期は下記のとおり取り扱います。
○原則
株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度に損金経理をすることになります。
これを確定日基準と言います。
○例外
実際に支給した日の属する事業年度において損金経理した場合はその事業年度で損金として扱うこととされています。
これを支給日基準といいます。
つまり役員退職給与の損金算入時期は金額が確定した時と、支払いがあった時のいずれかによることができるとされています。
役員退職金の金額の計算ですが一般的に次の計算式によっています。
退職時報酬月額×勤続期間×功績倍率=退職給与相当額
(注1) (注2)
注1 勤続年数で1年未満切り上げ
注2 代表取締役については昭和60年最高裁で3倍まで認められた事例があり一つの目安にされています。(3倍を超える事例もあります)
原則的な退職給与の経理は以上ですが、実務でもよくある例外的な退職金の支払い方を次の項目で述べさせていただきます。
在職しながら退職給与を支払う方法
退職していなくても退職給与を支払って損金経理が認められる場合があります。
○役員が分掌変更によって役員としての地位や職務の内容が激変して、実質的に退職したと同様の事情にある場合。具体的には下記のとおりです。
1.常勤役員が非常勤役員になった。
常勤していなくても代表権があったり、実質的にその法人の経営上主要な地位にある場合には退職の事実は認められません。
2.取締役が監査役になった。
監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている場合、大株主である場合は退職の事実は認められません。
3.分掌変更の後の役員の給与がおおむね50%以上減少した。
分掌変更の後においても、その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は退職の事実は認められません。
○使用人が役員に昇格したことに伴って支給する退職給与
これは役員退職給与ではなく、役員に就任することにより使用人に支払われる退職給与です。
法人の使用人が役員に昇格した場合に当然役員として法人に勤務し続けるのですが使用人としての地位を退職して新たに役員に就任した訳ですので退職給与規定に定める計算に基づき使用人であった期間に対応する退職給与を支給した場合には、その支給をした事業年度の損金の額に算入することが認められています。
役員退職金の分割支給
役員退職金の金額が確定したものの高額で一時金として支払うことが資金繰り上困難である場合にはこれを分割して支払うことが認められます。
例えば株主総会で6千万円の社長に対する退職給与の金額を確定した場合において当事業年度の資金繰りが困難なので退職金のうち3千万円を支給して損金経理をし残りの3千万円は翌期に支給をして損金経理をすることが認められています。あくまで資金繰りの都合であり利益調整ではないことが重要です。
分割した場合の所得税の源泉徴収の仕方もここで述べさせていただくと、役員の受取る退職手当金等の総額に対する税額を計算し、その税額を各回の支払額により按分して源泉徴収税額を計算します。
上記事例のように6千万円の退職給与で在職年数が30年であったとすると
退職金の総額は
(6000万円-1500万円)×1/2×40%-2,796,000円=6,204,000円
6,204,000円×102.1%=6,334,284円
仮に退職金を3年間に3000万円、2000万円、1000万円と分割した場合の各年の源泉徴収税額は以下の通りです。
1.第1回支払
6,334,284円×3000万円÷6000万円=3,167,142円
2.第2回支払
6,454,000円×2000万円÷6000万円=2,111,428円
3.第3回支払
6,454,000円×1000万円÷6000万円=1,055,714円
税額の按分計算はこの通りになります。
退職金の分割ですが分割の回数を多くすると退職年金として扱われ雑所得の課税となるので3回までの分割を限度とした方が良いと思われます。
・2017年8月4日 配信
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